
「ケッコンシマシタ」
久々に帰省した実家で、見つけてしまった写真付きの、はがき。
いやまぁ、わかってますよ。お年頃ですもの。こういうの、ありますよね。
「笑顔満開かよ」
悔しいような苦いような、なのに、あの日と変わんないなーというその目じりを見てたらさ、なんかこっちまで、もらい笑い。
「あー、洋ちゃん、3月に結婚したんだって」
今さら母が声を掛けてくる。うん、はがき見たらわかるよ、だって冷蔵庫に貼ってあるじゃん。
「悦子さん喜んでたわ」
「そう。悦子おばちゃん、元気?」
「元気だよ。今年はこんなご時勢だから、披露宴もしなかったらしいけど、おかげで洋ちゃんたち、家具奮発したって」
母はカラカラと笑いながら、洗濯カゴを抱えてベランダに向かった。
洋ちゃん。幼馴染み。同じリトルリーグで野球した。中学まで一緒。高校は別。
なのに恋をした。16の春。
触れられなかった、何も。初めての、恋。