薄い桜色のはがき|ぬるめ、初恋。36.8℃ ≪1≫

いろいろ
ぬるめ、初恋、36.8℃ 第1話

「ケッコンシマシタ」

久々に帰省した実家で、見つけてしまった写真付きの、はがき。

いやまぁ、わかってますよ。お年頃ですもの。こういうの、ありますよね。

「笑顔満開かよ」

悔しいような苦いような、なのに、あの日と変わんないなーというその目じりを見てたらさ、なんかこっちまで、もらい笑い。

「あー、洋ちゃん、3月に結婚したんだって」

今さら母が声を掛けてくる。うん、はがき見たらわかるよ、だって冷蔵庫に貼ってあるじゃん。

「悦子さん喜んでたわ」

「そう。悦子おばちゃん、元気?」

「元気だよ。今年はこんなご時勢だから、披露宴もしなかったらしいけど、おかげで洋ちゃんたち、家具奮発したって」

母はカラカラと笑いながら、洗濯カゴを抱えてベランダに向かった。

洋ちゃん。幼馴染み。同じリトルリーグで野球した。中学まで一緒。高校は別。

なのに恋をした。16の春。

触れられなかった、何も。初めての、恋。

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