[おすすめ曲]「乾涸びたバスひとつ」米津玄師さん[浸り、力を得る癒し]

音楽紹介

「こんな世の中」

もしあなたが
こんな思いを抱いているなら。

「美しい世界に閉じこもっていたい」

あなたが、そうした思いを
抱いているなら。

『乾涸びたバスひとつ』。
米津玄師さんのこの楽曲に、
たっぷりと浸ってみてください。

ヒリヒリした心が
少しだけ、潤いをもって
瞳を開けられます。

『乾涸びたバスひとつ』のもつ静謐な美しさ

コロナ禍?
不況?
格差?

そんなものがなくたって
そもそもこの世の中は
そんなに「美しい」世界じゃない。

抱える苦しみは
誰にも分ってもらえないし
欲しい愛は、優しさは
いつも自分だけをスルーして

うまく立ち回る「あいつ」にだけ
注がれる。

どうして?
なんで?

私は、こんなに頑張ってるじゃないか。

物語の中の主人公は
さえなくても
学校一のどんくささでも

ある日とつぜん
素敵な人と出会うのに。

ああ、もう
自分の世界が
この物語のようであればいいのに。

もう、この物語から
出ていきたくない。

そして聴こえてきたのは
このフレーズ。

小さなバスで暮らしている
少女はいつでも待っている
ひとり

呆けた色に変わっている
緑の木目と蛍光灯
ひとり

「乾涸びたバスひとつ」
作詞・作曲 米津玄師

美しい世界から、もう、
出ていきたくない。

Hikarabita Bus Hitotsu

悲壮感のない、ひとりの世界

街外れなのか、森の近くなのか、
いずれにせよ人気のない場所で、
果てることを待つように人々から
忘れられているような存在の

乾涸びたバス。

そこに、少女が一人、暮らしている。

でもこの「少女ひとり」からは
強い悲壮感は感じられません。

誰かとの想い出を大切にしながら、
でもその想い出も何だかあやふやな記憶で、
少女の目線はどうにも明瞭ではありません。

ピンホールの あやふやな写真ばっか
並んで凍えてる

「乾涸びたバスひとつ」
作詞・作曲 米津玄師

掴めそうで掴めない自分自身の感情と、
変わっていく「自分」という容れ物の中で、
少女が向かう先も、はっきりとはわかりません。

ただ、おぼろげに「薄い命の感じ」や
儚さや刹那さの空気を
この曲は常に帯びています。

儚いからこその、美しさが
この曲の世界観を「静謐」に保っています。

歌詞の詳細はこちらからどうぞ

「岬でバスを降りた人」という漫画

この曲を聴くたびに思い出す作品。

それは漆原由紀さんの
「岬でバスを降りた人」という作品。

漆原由紀さんは「蟲師」という漫画が
ヒットしたことで知名度を上げた
漫画家さんですが(私も「蟲師」大好きです)、
その他にも素敵な作品をたくさん生み出されています。

『フィラメント』という短編集に入っている
「岬でバスを降りた人」というこの作品は、
岬の端にあるバスの終点近くの商店を舞台にしたお話。

終点までバスに乗ってやってきた人は、
帰り道、バスに乗らないと帰れません。

しかし、たまに「降りた人」と
「帰るために乗った人」の人数が
合わないことがある。

その理由は言わずもがな、ですが、
作品を最後まで読むと
色々と考えさせられることがたくさんあります。

で、この「岬でバスを降りた人」のもつ雰囲気と、
「乾涸びたバスひとつ」の雰囲気が、
私の中ではリンクしてしまって
「乾涸びたバスひとつ」を聴くたび
この物語を想い出すのでした。

『乾涸びたバスひとつ』はファンタジーな美しさを
まとう作品ですが、同じ空気感で、「岬でバスを降りた人」は
現実の空気の匂いをもって、儚い世界の無常観を
感じることができます。

フィラメント~漆原友紀作品集~ (アフタヌーンコミックス)

美しい世界から立ち戻るとき

『乾涸びたバスひとつ』は、世界観が幻想的でとても
美しい曲です。

ただ、この曲は
「ああ、もう、この美しい世界から現実へ
戻りたくない」
だけで終わらせてくる作品ではないんです。

浸って浸って、この美しい世界に浸りきってしまうと
心がひたひたと潤っているんです。

だから、また、瞳を開けることができる。

現実がいかに美しくないものであったとしても
また、生きていこうと思える勇気を
心に抱くことができる。

『乾涸びたバスひとつ』は
そうした力をもらえる、そんな曲です。

あなたの世界が、たとえどんなに汚されたとしても
その奥に、決して汚されることのない世界がある。

その世界を、あなたがこの曲でゆっくりと
取り戻せることを祈って。

乾涸びたバスひとつ

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