【おすすめ漫画紹介】「ねこねこ幻想曲」【高田エミさん】

漫画紹介

1980年代後半~1990年代前半にかけて、集英社の少女漫画誌『りぼん』で人気を博した「ねこ・ねこ・幻想曲(ファンタジア)」。

あったかくて可愛くて、でも感動するお話も、いっぱい笑えるお話もあって。

漫画界の「絵本」のように、これからも子ども達に触れてほしいな、と思う「ねこ・ねこ・幻想曲」をご紹介します。

「ねこ・ねこ・幻想曲」基本情報

「ねこ・ねこ・幻想曲」は初出が1985年冬の号の『リボンオリジナル』。

その後、1986年6月号から『りぼん』本誌で連載が開始され、一度の最終回(1986年8月号)を経て、1986年11月号から再連載が開始。

1992年5月号で連載が終了しています。

その後、番外編が掲載されたり、1994年から主人猫の「シロ」の娘「ルル」のお話が掲載されたりしています。

単行本は新書版が全16巻。文庫版が全8巻となっています。

電子書籍版「ねこ・ねこ・幻想曲」16巻セット

とにかく「一生懸命」が可愛い!

主人公は「黒猫のシロ」。

高校生である里子に飼われることになった、黒猫のシロはお月様の力で「人間に」変身できる不思議な力をもっています。

そして変身をすることで、飼い主である「里子」や里子の家族のパパ・ママをちょっとした騒動に巻き込みつつ、その時起こった日々のささやかな事件を解決していく……というのが「ねこ・ねこ・幻想曲」の王道パターンでしたね。

「ねこ・ねこ~」は、基本的にはコミカルだったりドタバタだったりのお話なんだけれど(そしてここは作者さんの心の優しさだと思うのだけど)、最終的には悪者過ぎる悪者はいなくて、みんなハッピーになるような物語。

小学生だった自分が純粋に物語を「ハラハラ」「ドキドキ」しながら楽しめる作品でした。

基本お話は、シロに関わる人が困っていることや、悩んでいることなどにフォーカスが当てられて、それを解決しようとする方向で進みます。

シロは結構おせっかいなことをしたり、彼女がトラブルメーカーになることも多いのだけれど、その一生懸命さが可愛くて、憎めない。

例えば、飼い主の里子が恋に悩んでいるお話では、シロが何かお手伝いしようとして、頑張る、とか。

思いやって、頑張ってほしくて、大事だからこそ、嫌われてでも大好きな里子が幸せになるようにぶつかっていこうとするシロは、今は本当に健気だな、と思える(当時は「なんでシロはいらん事するかな」と思っていた節も結構あったけど…)。

自分が諦めかけている時に、自分の一番痛いところをついて発破をかけてくれる存在は、とってもありがたいこと。

「ねこ・ねこ・幻想曲」は、大きくはコメディチックな流れで進んでいくお話だったけれど、中には太平洋戦争に絡んだお話があったり、脇役の「ボス」が隻眼である理由の述べられる重厚なお話が合ったりと、読み応えがある作品でした。

猫目線で語られる人間世界の理不尽さや興味深さは、子どもだった私に「色々な視点で物事を見ることの大切さ」をしっかりと教えてくれました。

他にも、長老と呼ばれる老猫の生きてきた過程を描いたお話や、シロの生い立ちなど、ポイント・ポイントでお話が締まる部分があり、緩急がついたとても良い流れ。

何より、子どもだった自分が、自分の心を無理させなくても楽しめたというのは、本当に大きな部分だと思います


おわりに

無理に大人としての理解力をもたされることなく、だからと言って「子どもにはこんなもんでいいだろう」という妥協もない、等身大の漫画が「ねこ・ねこ・幻想曲」。

そして「漫画はとても丁寧に描かれた極上のエンタメだ」というポジティブな出会いのおかげで、その後、私は漫画を選ぶ際に自分にとっての「当たり」を見つけるのが上手になりました。

どんな作風でも、丁寧に描かれているものには面白さがあるし、適当に描かれているものは読んでいる人間に適当さが伝わってしまう。

全てがアナログで描かれていた当時の漫画。

妥協なく線1本1本に込められた作者さんの熱は、確かにまっすぐ、読者である子ども達に届いていました。

当時のりぼんの連載陣や、今回取り上げている高田エミさんのおかげで、私は面白い漫画を見つける嗅覚を養えた気がしています。

「ねこ・ねこ・幻想曲」は、今は実家にあって手元にはないのだけれど、今度実家にいったら、こちらに持ち帰りたいなぁ。

娘と一緒に楽しめたら、嬉しいなぁ。

「ねこ・ねこ・幻想曲」の根底にあるぬくもりは、時代を超えたって、誰にでも感じられるものだと思えるから。

高田エミさんは、現在は漫画を執筆されていないと、どこかで耳にしたけれど、高田さんの描かれたシロや、シロの家族は、今も私の中に生きていると、伝えたいな。

「ねこ・ねこ・幻想曲」は、私にとっては、たくさんの素晴らしい童話のように、時間をこえて伝えていきたいと思える素敵なお話です。

電子書籍版「ねこ・ねこ・幻想曲」1巻

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