娘の斜視についての治療記録 vol.2 専門医への初診

3歳児健診で娘、真綿の斜視がはっきりとしてからひと月。真綿は、県内にある小児専門の総合病院の眼科で診察を受けることになった。小児専門の総合病院へ行くのは実は初めてではなかった。真綿には卵アレルギーがあったので、麻疹・風疹ワクチンを受けるために、念のためこの専門病院の小児科でMR予防接種を受けていたから。それでも、2回目に足を運ぶのが、真綿の斜視の治療のためだとは、予防接種を受けた当時の自分は思ってもいなかったけれど。
前回までの流れの詳細はコチラ


専門医にかかるまでに夫と話していたこと

さて、真綿の目について、夫と私はどんな話をしていたのか?真綿がまだ1歳くらいの時は大抵、私が「真綿の目が気になる」→夫「う~…ん、確かにズレてる気はするけど……どうなんだろ?」という感じだった。ただ2歳くらいになると、真綿の目のズレは一緒に生活をするものにはよくわかる感じだったので、夫も「確かにズレてるね」と言っていた。夫に話して、夫も「あなたの考えすぎだよ~」という感じだったら、私はもっと一人でウツウツしていたかもしれない。

でも、夫は大げさにし過ぎるでもなく、しかしスルーするわけでもない、きわめてフラットに対応してくれた。このおかげで、私も冷静に真綿の目について考えられた気がする。

小児専門総合病院の眼科

総合病院に予約を取ると、安心とドキドキがない交ぜの気持ちになった。でも、ここでもまだ私は、斜視はメガネで矯正、と思っていたので、メガネをかけて遊んで、真綿がケガをしないようにしなきゃ、とかそういう心配をしていた。ちょうどこの時、下の子(2013年生まれ・こだま(仮名))は1歳半くらいだったので、下の子との遊びの中で、真綿がケガをしないためには……なんてことも考えていた。そしていよいよ小児専門病院での診察の日がやってきた。

いざ病院へ!

夫と私、真綿とこだまを連れて、私たち家族は家から車で50分程度の病院へ向かった。斜視ってどんな検査をするのかな、どんな先生かな、話しやすいといいな、など、色々な思いを逡巡させているうちに、車は病院へ到着した。初診の手続きを終え、眼科前で待っていると、早々に名前を呼ばれた。下の子がいたことと、真綿が「お母さんと一緒に行きたい」と言ったこともあって、検査室には私が真綿と共に入った。下の子は待合やロビー(のようなところ)で、夫が世話をしてくれた。

眼科での検査 その1:視力検査

最初の検査は、視能訓練士さんによる「視力検査・斜視の検査」などが行われた。まず視力検査は、大人が通常行うような、ドーナツ型の円の、どこに切れ目があるかというのを判断するものだった。大人だと指や言葉で切れ目を指し示すところ、3歳児には切れ目の入ったドーナツ型の円が渡されて、目で見える形と同じように円を動かす、という方法がとられていた。なるほど、と思った。これなら子どもにもわかりやすいんだろうな、と。

眼科での検査 その2:斜視の検査

そして次に行われたのは、斜視の度合いを調べる検査。子どもは視能訓練士さんが指示する方向を見る。訓練士さんは子どもの目の前に長い棒状のプリズムのようなものをかざして、眼球のズレがどの程度かを調べる、と言った具合だった。検査室の中には、子どもになじみの深いキャラクターがそこここに置かれていた。これは飾りではなく、訓練士さんが「○○の方を見て~」と指示する時に使われる。例えばドラえもん見て~とか、ピカチュウ見て~というように。

検査中の子どもの様子

当時の真綿は4歳前という月齢の割に、人の指示などを汲みやすい子だったので、検査は特に問題なく終えられた。何か痛い検査とかあるんだろうか……と不安に思っていたので、検査が終わると私がホッとした。一通り検査が終わり、再び待合室へ。少し待つ時間があって、その後、担当医の診察となった。

私自身は、眼科なんてコンタクトを作る時くらいにしか来ないし、ましてや目の病気になったこともなかったので、ドキドキしていた。一方、診察を受ける当人の真綿は……よく状況がわかってなかったと思う。事前の検査で「エライね、エライね」と褒められて、むしろちょっと得意気ですらあったかもしれない。

担当医・森先生との出会い

看護師さんに促され、診察室へ。そこにいたのは、私たち夫婦と同じくらいの年齢(多分少し上)の、優しそうな男の先生だった(以降、先生のことは、仮に森先生とする)。森先生は、視能訓練士さんが診てくださった検査結果をもとに、その他の検査をしてくださった。例えば機械を使って眼球の中を診るような検査や、斜視についての医師的な検査など。

そして、森先生はこうおっしゃった。「彼女の斜視を治すには、手術が必要ですね」

斜視で手術。自分の認識不足とは言え、想定していなかったその言葉に、私は驚いた勢いで聞き返してしまった。「え?手術ですか???」

森先生はきわめて穏やかに、そして丁寧に、さらに冷静で、データ的に、真綿の斜視の現状と、その斜視を治療するための手段、段取りなどを説明してくださった。

真綿の斜視は2種類あった。上方向への斜視と、外方向への斜視。どちらも両目にあって、しかも斜視の度合いは20度を超えるという、教科書レベルの斜視だと教えてもらった。ある程度の斜視なら、メガネの矯正で治療する方法もあるし、筋肉の訓練で治療する方法もある。けれど真綿ほどの斜視になると、眼球についている筋肉を動かさない限り、治ることはない、というのが、大まかな説明だった。

手術という事実に驚く

まーじーかー……というのが、当時の素直な感想。子どもが手術を受けることなんて考えてもいなかったし、しかも目の手術……。もし、もし、万が一何かあったら、真綿の目は見えなくなる……。これはとっさに思った。私と夫は、森先生にたくさんの質問をした。真綿の斜視の状況について、わからないことはもちろんのこと、もし手術をしなかったらどうなるか、とか、万が一、手術がうまくいかなかったら?ということも正直に聞いた。

手術のミスに関してなんて、医師によっては聞かれた時点で気分を害する人がいることは予想がついていたけれど、森先生はそうした医師ではなかった。斜視の手術における、実際にあったミスの事例も話してくれた。しかし、森先生いわく、そうしたミスは聞いたことがあるけれど、自分が医師になってから起きた事案は聞いたことがない、と。

森先生に尋ねたこと

私がまず聞いたのは、具体的には「手術で失明することはないのか」ということだった。これは、先生や治療に不信感があるのではなく、手術はどうしても人の手だから、全くミスがないとは言えない、だから、あり得るリスクについて聞きたい、という気持ちから尋ねたことだった。

森先生は親の気持ちを汲んでくれる医師であるので、手術にはやはりリスクがあることは否めない、と答えてくれた。今回の場合だと、眼球の白目の壁が薄くて、通常通り手術をしていても、壁の薄さのために、眼球内に傷がつくこともある、と教えてくださった。そして、この白目の壁の薄さに関しては「やってみないとわからない」ということも教えてくださった。

リスクを知ることで腹を括った

私は、考え得るリスクを聞いておくことで、手術を決断した際に、万が一何かあれば、真綿の人生を狂わせた責任を、自分がしっかり負う腹を括ろうとしていた。森先生の説明は本当にわかりやすく、時間もしっかりとって、話をしてくださった。おかげで、私たち夫婦は真綿の斜視について、手術を含めた治療をすることに決断ができた。この先生が執刀してくださるなら、きっと大丈夫だ。そう思った。

そうして2016年4月初期に行った最初の診察が終わり、真綿の斜視治療に道が示され、私たちは帰途についた。次の検診は夏。初診でついた真綿の斜視診断は「間欠性外斜視」であり「下斜筋過動症」だった。


コメント

タイトルとURLをコピーしました