始まりと終わり

2014年「笑っていいとも」が終わりました。いつか終わりが来るとは思っていても、本当に終わることが決まると、無性に寂しくなったことを覚えています。物心ついた時には「お昼はタモリさん」という図式が自分の中で出来上がっていたことに気付いたのは、いいともがすでに終わってしまって数か月が経った頃でした。


笑っていいともを見られるのが嬉しかったあの頃

「笑っていいとも」は1982年に始まったので、番組開始当時、私は2歳。一般家庭の日常的な娯楽はテレビ番組という時代であったこと、またフジテレビが現在のように低迷しておらず、どちらかと言うと時代を先駆けた番組作りをしていた(ように私たちには思えていた)こともあって、笑っていいともはお昼の帯番組として高い人気で定着していきました。当時はたくさんの面白い企画やコーナー、何よりもタモリさんの名(たまに迷?)司会ぶりも楽しみで、学校が振替休日になった日や、風邪などで学校を休んだ日に、笑っていいともが見られるのは何だか得したような、嬉しいことでした。

私が笑っていいともを見ていた頃は、ダウンタウンやウッチャンナンチャンというような、今では大御所と言われる芸人さんが若手レギュラーとして出演していることも多く、コーナーでの彼らの掛け合いもスゴク面白かったのを覚えています。今から思うと贅沢なレギュラー陣の番組を見ていたんだなぁ、と思いますね。

笑っていいともに驚きのレギュラーが参加することに!

笑っていいともを楽しく見ていた1990年代、その番組にトップアイドルがレギュラーとして加わることになりました。それはSMAPの面々。笑っていいともにレギュラー出演していたのは、中居さんと草彅さんと香取さん。笑っていいとも=バラエティという意識が根底にあったので、そこに当時アイドルとしてすでに人気の高かったSMAPのメンバーがレギュラー出演することになったのは、中学生の自分でも驚きでした。

ただ、確か中居さん、草彅さん、香取さんが番組に出演し始めた頃は、SMAP×SMAPが放送開始になる前。アイドルや芸能人に疎い自分にとっては、SMAPに属する中居さん達はまさにアイドル!という感じで、身近と言うよりテレビの中の人というカテゴリーにおいても最も遠い存在(憧れ的な意味でも)だったような気がします。

私はこれまでにタレントさんのファンクラブなどに入ったことはなく、芸能人と言われる人に熱狂的になったこともないのですが、それでもSMAPというグループが当時の世間で大変な人気を誇っていることはわかっていましたし、見ていて楽しい気持ちをくれる人たちだという認識はしっかりとありました。

SMAP×SMAPと10代の自分たち

SMAPというグループに熱狂的なファン意識をもっていたわけではない私でしたが、それでも中高生女子のみならず20代のお姉さま方にも人気のSMAPはやはり気になる存在でした。特に当時はフジテレビの月9と呼ばれるドラマ枠が若い世代に相当支持をされていた時代なので、月9に登場する俳優さんや女優さんについてはよく話題になったものでした。

中でもSMAPの木村拓哉さんは男女を問わず本当にたくさんの人が「カッコイイ」と言っていた存在で、イケメンに疎い自分でさえ「あぁ~この人は端正な顔でカッコイイな」と思うほどでした。木村さんの人気が爆発的になっていく頃に、SMAPの冠番組であるSMAP×SMAPが始まりました。音楽番組がほぼ壊滅状態にあった頃、SMAP×SMAPではアイドルであるはずのメンバーが、バラエティに富んだコーナーで色々な表情を見せてくれるのが本当に新鮮で、熱烈なSMAPファンでない自分でも、SMAP×SMAPを楽しみにしていました。

SMAP×SMAPがアイドルを身近にしてくれた

SMAP×SMAPが始まったことで、私はいいともで知るだけではない中居さんや草彅さんや香取さん、ドラマで見るだけでない木村さんや稲垣さんを知ったのだと思います。地方とはいえ進学校に通っていて、日々小テスト・テスト・予習・復習・全国模試……とちょっとグレーな高校生活を過ごしていた自分にとっては、SMAP×SMAPを見ている時間は本当に気持ちがリフレッシュする楽しい時間でした。

そして次の日、前日に見たテレビのネタで友人と話す時間は、まさに高校生の日常って感じで楽しかったのを今でも覚えています。自分の歌唱力をネタにする中居さん、絶対的イケメン枠でありながら被り物のコントで下ネタもOKな木村さん、普段は優しい人っぽいのに勝負事では本気になる草彅さん、飄々としていると思いきや天然な稲垣さん、そして一番年下でやんちゃが許される香取さん。

画面狭しと動きまくるSMAPに、当時の自分がどれだけ楽しい気持ちをもらえたかは言うまでもありません。まだまだ高校生の自分には、彼らがテレビで見せてくれる表情は「本当」だと思えましたし、そこに台本やシナリオがあっても、楽しそうにしている彼らのことを「ビジネスだから、仕事でやってる」と思う心のひねくれはまだありませんでした。

森さんの脱退

SMAP×SMAPでは印象に残っている場面がいくつもありましたが、高校生だった私にとって大変印象深かったのは、SMAPのメンバーであり、人気も高かった森且行さんが脱退することになった森さんにとっての最終回でした。

はっきり言って、SMAPの所属しているジャニーズ事務所については、高校生の自分たちの間でも良いウワサはあまりありませんでした。特にジャニーズを辞めていく人やグループを脱退していく人に対しては相当に茨の道があるというウワサが多かったのです。そして、いなくなったメンバーや去ろうとするメンバーについて、現役のメンバーが語るとか情をもって接するということについては「ご法度」に近い印象がありました。

そんな中、森さんがかねてからの自分の夢であるオートレーサーを目指してSMAPを脱退するというのは衝撃でしたし、そんなことが許されるのだろうか?という子どもながらの心配もありました。ちょっとずつ大人の事情も見えつつあった高校生の自分は、これで森さんはSMAPにもともといなかったような扱いになるのではないか、なかったことにされるのではないか、と危惧したものでした。

しかし、森さんにとってのSMAP×SMAP最終回は中居さんが涙で進行しづらくなるのを木村さんが代わって進行するなど、メンバー間での思いやりを見ることができる回で、この人たちは本当にお互いを尊重しあっているんだな、と思った記憶が強く残っています。

そしてその後は、森さんは大変な努力でご自身の夢を現実のものとし、SMAPとして残ったメンバーは、それぞれが今まで以上に活躍されるようになったのでした。

個々の活動でも評価を上げていくSMAPを見ていた

高校卒業後、進学のために地元を離れた私は、新天地で一人暮らしを開始。受験を越えて自由がいっぱいの大学生活を満喫する一方で、地元にいた時から続いている笑っていいともやSMAP×SMAPを見ると「変わらない何か」にホッとすることもありました。

2000年代に入っていた私の大学生時代。SMAPのアイドルやタレントとしての人気はすでに揺るぎないものになっていて、メンバーはそれぞれの個性を生かした活動が増えてきていたように思います。特にドラマや映画など演技の方面では、木村さんだけでなく他4人のメンバーが主演したり出演するドラマも大きな注目を集めるようになっていて、特に草彅さんの「いい人」役の演技が高く評価されていたように思います(これも私はドラマに疎いので周囲の反応を記憶している感じですが)。

5人のメンバーがそれぞれの個性を生かして、特色豊かなお仕事をされているのを見るにつけ、スゴイな、と思うと同時に、どんなに個々のお仕事の枠が広がっても、SMAP×SMAPで5人がそろってコントや料理をしている姿には安心感も得ていました。

例えるならこうした気持ちは、高校を卒業してバラバラになってしまったけれど、会えば当時のように話せる友人がいるような感覚に近い気がします。大学に入って忙しい日々を送り、ほとんど見る機会を失っていた笑っていいともが、やはり以前と同じように、正午に変わりなく始まるのも、同じような安心感がありました。

メンバーの立ち位置がほぼ確定してきていた頃

私はSMAPの活躍や個々の方々について、本当に外野の外野の外野の外野の……∞というような知識しかありません。コアなファンの方々のように色々な情報を詳細に知っているわけでもありません。

それでも、自分の過ごしたいわゆる青春時代と言われる時代の真ん中には、いつもSMAPがいました。木村さんの長髪スタイル(ロン毛ですよね)が一般的な男性にも支持をされた時は、本当~~~~に街にロン毛の男性が増えたのも覚えています。同級生にも木村さんのようなロン毛の男子が増えて「あれは木村さんだから似合うんじゃ……」と密かに思っていたのも覚えています。

コメディをしても最終的には「キムタクかっこいい!」となる絶対的イケメン枠の常連として地位を確立していた木村さん、司会やトークに磨きをかけてポストタモリさんとも言われるようになった中居さん(もちろん演技も評価されていましたが)、演技力やジーンズ愛で個性派俳優として安定し始めていた草彅さん、同じく個性派でも草彅さんとは異なりミステリー色も醸し出していた稲垣さん、末っ子の立ち位置からすっかり明朗なイケメンとしてバラエティも演技もできるマルチタレントとなっていた香取さん、2000年も5年が過ぎた頃には、SMAPはすでにアイドルというより、個性派の職人集団と言った感じになっていた気がします。

インターネットの普及もあって、テレビから遠ざかっていた私ですが、SMAPの姿は街のポスターや雑誌の表紙、ふとつけたテレビでもCMで目にしていましたし、街頭ではどこからとなくSMAPの曲が聞こえるような日常でした。すでにSMAPは私たち世代にとっては当たり前にある存在になっていたように思います。

世間の娯楽が変わっていった

開始当初は「人気なんて出るの?」と言われていたJリーグの人気もしっかり定着し、日本人にとってのスポーツ観戦が野球オンリーから選択肢が増え、私たちの日常には今までにない娯楽が多く入ってきました。通信手段はポケベルからケータイになり、若い世代は季節ごとに出されるケータイの新機種に夢中になりました。メールが気軽にできて、絵文字が流行し、写真や動画がメールで送れるようになると、自分自身で撮った写真をインターネット上にアップする人も増えました。ケータイの普及に先駆けるように広がっていたインターネット網は、素人の発言の場や表現の場を増やし、エンターテイメントの発信が芸能界からだけではなくなってきていました。

こうした変化に伴うようにキー局だけだった放送局は有料で見られる専門チャンネルも増え、私たちのテレビに対する選択肢は増えました。一方で、娯楽の選択肢が増えたことでテレビ離れという現象も少しずつ広がり、20年前には想像もしていなかったような状況がテレビを取り巻く環境に起こり始めていました。

今では、時代を先駆けるように目新しい番組作りをしていたフジテレビは落日の様を呈していますし、ずっと続くと勝手に思っていた笑っていいともは終了しました。終了前と終了直後には「タモロス」とまで言われたいいともでしたが、番組終了から2年経った今では世間はすっかりいいともの無い日常に慣れて、新しい毎日が問題なく過ぎています。

いいとも終了から2年が過ぎて

いいともが終わることになったことを知った時、そして本当に終わってしまった時、何だか得も言われぬ寂しさを感じた私ですが、実はいいともが終了した頃、私は日常的にテレビをあまり見ない生活をしていました。ですから、いいともが終わることに寂しい気持ちはあるけれど、もしかしたらいいともがない日常には私自身はすぐに慣れるのではないか、とも思っていました。

実際、正午にテレビを見る習慣のない毎日だったので、いいともが終わったことで私の日常に大きな変化は起こりませんでした。しかし、何かきっかけがあって正午にテレビをつけた時、タモリさんがいない12時台に未だに違和感を覚えることがあります。子どもが夏休みに入った時、夏休みはいいともが毎日見られるなぁ~と思っていたワクワク感が、今はどこを探してもないことに今更気づく時があります。

マンネリを極めていたかもしれない終了間際のいいともですが、やはり自分の中で正午のテレビはウキウキウォッチングだったんだなぁと、いいともはずっと変わらずにあると思っていたんだなぁと、思う時があるのです。

いいともがない日常については、子どもの頃にとても良く遊んだ公園がなくなってしまったような寂しさを今は感じています。あの時のあのコーナーで姉弟で爆笑したよな、とか、確かあのコーナーには人気が出る前のあのタレントさんが出ていたよな、という気持ちは、あの公園のあの遊具で友だちと必死になって遊んだよな、という気持ちに共通する何かを感じたりもします。

始まった番組はいつかは終わるもの、生きている人に終わりがあるように、番組だって年老いて去るのだ、ということを、いいともの開始と終了でしみじみと感じた気が、今、しています。

SMAPが青春時代にいたことは変わらない

今年初頭、SMAPに解散報道が出ました。自分でもびっくりするくらい、言い知れぬショックな気持ちになりました。今回何度も書いていますが、私自身はコアなSMAPファンではなく、メンバーの誰かに特に執心しているということはないにも関わらず、年頭のSMAP解散報道に私は動揺しました。

え~…SMAP解散なの……ということを考えていると、自分自身がSMAPの番組などを目にして楽しい気持ちになったことなどがまざまざと思い浮かびました。ファンでなくても知っている世界に一つだけの花とか、シェイクとか夜空ノムコウとか、彼らのヒットソングも知らず頭の中に流れました。

大学時代、テスト明けにみんなで遅くまで盛り上がったカラオケで、友だちみんなでSMAPの曲を酔っぱらいながら歌ったな~とか、友人の家でSMAP×SMAP見ながら将来のこととか話したな~とか、振り返るとSMAPが出てくる自分の思い出には楽しい思い出とか、前向きな思い出しかないことにも気づきました。

そして、間違いなく、自分が過ごしてきたキラキラした時代の中にはSMAPがいたことを改めて知ったのです。

一度は解散を避ける方向だったSMAPですが、ここにきて解散は決定したという報道が出ました。一度目の報道後にあった謝罪の放映を見た私としては、あんなに辛く険しい気持ちになっている5人を見るくらいなら、個人個人がもっと伸びやかにいられる道を選ぶのは最善なんだろうと思いました。

今まで、彼らの姿に励まされたり、楽しい気持ちをたくさんもらってきた勝手な一視聴者からすると、やっぱり険悪な関係になったことが解散原因の1つとしてあるのは、残念に思わないでもありませんが…。

SMAPがいたから楽しさが増えました!ありがとうございます!

アイドルの既成概念を壊し続け、ずっと新機軸を走ってきた彼らには、きっと彼らにしかわからない重圧やしがらみがあるのだと思います。ただ現状がどうであろうと、今まで彼らが私たち視聴者に提供してきてくれた楽しい時間は、SMAPがたとえ仲違いして解散をしたとしても、消えるものではありません。

ずっとそこにあり続けると思えたいいともが終わり、いいとものない日常が支障なく紡ぎだされたように、残念だけれど、SMAPが解散しても、SMAPがいない日常は動き続けていくのでしょう。自分にとってすら大きな存在だったSMAP。きっと彼らが解散すれば、世間は大きなショックを受けるのでしょう。でもきっと個人個人がSMAPという存在の「日常性」に気付くのは、しばらくしてからなんだろうな、と自分自身は思うのです。

SMAPのメンバーが個人個人活躍される姿はきっと今後も長く目にすると思います。それだけの力量と個性のある方々だと、本当に心から尊敬します。それでも、恐らく私たちが「いつもそこにあると思っていたSMAP」を目にすることは、今年限りでなくなることに寂しさを禁じ得ません。

自分でも気づかないほどに、自分の中で大きな存在になっていたSMAPというグループ。5人で活躍されていたあの楽しそうな姿を、きっと私は自分の青春時代の思い出とともに、覚え続けているのでしょう。今は本当に難しいのかもしれませんが、いつか、再結成をしなくても、脱退した森さんのことをみんなが話題に出せたように、5人がどこかで和やかに話せる姿を目にしたいな、と思ったのは本当に一視聴者の勝手な思いです。

最後に……SMAPがいたから、私の青春時代の彩色はきっと何色か豊かになったと思っています。とっても感謝しています。SMAPのみなさん、本当に楽しい時間をたくさんくださってありがとうございます!


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