どうしても、忘れられないシンガーソングライター。
それがsuzumokuさんです。
今は一線からは引退されていますが、あなたが歌っていてくれて良かった。心からそう思います。
「僕らは人間だ」は震災直後に書かれた曲ですが、社会が大きく変動した2020年、多くの人に届くといいなと思い、今回取り上げました。
「僕らは人間だ」の基本情報
「僕らは人間だ」は2011年3月、東日本大震災直後に作られた曲です。
suzumokuさんは2011年1月から全国ツアーに回っていて、仙台公演への移動中に被災しました。
仙台公演は中止となりましたが、次の開催地である富山に移動しこの曲「僕らは人間だ」を作り発表。
チャリティーソングとしてとしてリリースされました。
現在収録されているのは『キュビズム』というアルバムです。
『キュビズム』はsuzumokuさんらしいというか、社会風刺の効いた刺さる曲が多いアルバムとなっています。
その目を開けるんだ 僕らは人間だ
震災後すぐにできた曲ということもあり、「その時」の空気感がとてもリアルにパッキングされている曲だと、個人的にはそう思っています。
当時私は西日本にいましたが、第1子がお腹にいて、とても不安な時間を過ごしたことを今でもよく、覚えています。
息を止めるな 繋ぐ手を放すな
2011年3月11日。
震災が起きた当時、私は妊娠4か月で、西日本のとある街の職場にいました。
その建物は強固な作りで、他の場所は揺れたらしいのですが、私がいた場所は揺れませんでした。
震災発生から30分ほどして、同じ職場の別フロアの人が
「東北が大変なことになっている!」
と飛び込んできました。
その部屋にはテレビがなかったため、ケータイのワンセグ放送を開くと、そこに映ったのは「津波警報」の文字。
それから後のことは、多くの人がリアルタイムに目にしている通りです。
実際に被害を受けることのなかった私ですら、不安や虚無感、何もできないもどかしさに「日常が一瞬で変わること」の恐ろしさを痛感していました。
深夜、ラジオから流れる「アンパンマン」のオープニングに、ただただ、涙が流れる毎日でした。
そんなある日、以前から好きだったsuzumokuさんの曲がラジオから流れました。
「待っていろ。」「諦めるな。」「大丈夫。」「気を付けて。」
何気ない言葉を どれ程の命が待ってるだろう出典:僕らは人間だ/作詞・作曲 suzumoku
力強く、飾らない言葉が、suzumokuさんの声に乗って自分の耳に届いた時、私は「自分にできること」を見つめ直しました。
そこから、妊娠中の自分でもできること、協力できること、何より生まれてくる人に何を伝えるべきか、本当の意味で震災に向き合うようになったのでした。
コロナ禍という「有事」
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、2020年、私たちの生活はたちどころに「これまでの日常」を失いました。
ネガティブな面が多かった一方で「働き方」を変える面では功を奏した部分もありました。
それでも、そうした一部の「奏功部分」をもってしてもやはり、ダメージの方が大きかったのは否めない気がします。
この1年を通して私が抱いたのは「まるで戦時中」という感情でした。
実際に武器によって争いが起きたわけでも、国による一方的な統制があったわけでもありません。
しかし「自粛警察」「マスク警察」という言葉にみられるように、これまで日常に隠れていた「過度な正義感」と「不満」が混ざり合い、何とも言えない圧迫感が、社会を覆っていました。
昔、耳にした「戦争は誰かが起こすのではなく、大衆が空気に呑まれた時が危ない」という言葉を、思い出しました。
自分たちで判断すること、理性をもって動くこと、何より他者を思いやり他者に優しくあること。
これらが日常からポロポロ、まるで櫛の歯が欠けていくように、落ちていく日々。
閉塞感で心を病む人も増え、また相手が「自然」であるだけに先行きが見えない。
でも、ここで、折れるわけにはいかない。ここで、矜持を捨てるわけにはいかない。
このギリギリの思いを支えてくれたのは
「僕らは人間だ」
という、たった9文字の言葉でした。
朝の光だ 始まりの合図だ
取り戻してみせよう いつかの日常を
夜の暗闇に 底なしの不安に
星が寄り添うだろう 光を携えて
涙流れて 全て奪われて
ここから生きるんだ 僕らは人間だ出典:僕らは人間だ/作詞・作曲 suzumoku
まとめ
2020年、私たちの生活は大きく変わりました。
ただ、私たちが変わったのは、変えてしまったのは、何より「心の在り方」だったように思います。
疑心暗鬼、過度な正義感、自己肥大。
もちろん、社会(多くの人)が健やかに巡っていくため、個々人が我慢しなければいけないことはたくさんあるでしょう。
また「これまでと同じ」で良いものばかりではないし、今後が「今までと一緒」というわけにもいかないことは明らかです。
しかし、どうせ社会が「アップデート」するなら、ライフサイクルだけでなく、何より「心の在り方」を上位にアップデートしたいですよね。
私たちは人間です。
間にあり、間にあるからこそ、社会を築ける動物なのだということを忘れずにいたいと、日々そう思うのでした。
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