「人魚姫」と聞くと悲恋。
ディズニーの「リトルマーメイド」と聞くとハッピーエンド。
同じ人魚でも彼女たちがたどり着いた先は全く異なる未来でした。
どちらの「人魚姫」も自分の力で「先」を切り拓いたように思えますが実際には「王子様」の気持ちひとつで未来が変わってしまうことに、違いはないと私は感じています。
今回ご紹介する「マーメイドラプソディー」はこの2つの代表的な人魚姫とは異なる視点があるのが、とても興味深いなと。
海に帰った「マーメイド」が選ぶ未来は、さて?
「マーメイドラプソディー」の基本情報
「マーメイドラプソディー」はSEKAI NO OWARIの通算3枚目、メジャー2枚目となるアルバム『Tree』の6曲目に収録されています。
SEKAI NO OWARIの楽曲はボーカルであるFukaseさんが作詞されているものが比較的多いです。
ただ今回ご紹介している「マーメイドラプソディー」は主にピアノを担当されているSaoriさんが作詞されています。
Saoriさんは小説も書かれているので、作詞もさすがな感性が光っていると(個人的に)思っています。
人魚の自由と不自由
冒頭でも書いたのですが「人魚姫」の物語って基本的にはアンデルセンの悲恋「人魚姫」かディズニーのハッピーな「リトルマーメイド」か、という印象が強いです。
この2つ、特に後者は「王子様と協力して」魔女を倒し、自分の未来を切り拓いたように思えます。
けれど、もし王子様が魔法ではなく本当に別の女性を好きになっていた場合、結局はアリエルも海の泡になっていた運命です。
私的には「なんだこの、相手の気持ち一つで変えられる自分の運命」って思います。
しかし、私の中にあった2つの「人魚姫観」はSEKAI NO OWARIの「マーメイドラプソディー」で1つ新しい観点が加わりました。
不自由だから自由な人魚
「マーメイドラプソディー」の中には次の言葉が何回も登場します。
わたしは貴方が会いに来てくれる
「不自由な」この場所が
とても好きだわ出典「マーメイドラプソディー」/作詞 Saori 作曲 Nakajin
これは主人公のマーメイドが「広い世界」を見る前の気持ち。
彼女は自分自身の気持ちが守られる「見知った場所」で「そこで得られる幸せ」に満足している状態です。
だから、今の場所から動きたくないし、貴方が会いに来てくれることで充分満足しています。
この曲は映画「海月姫」のために書き下ろされたものらしいので、お話の内容にも沿っているように思えます。
変化を恐れて広い世界を知らなくても、わかっている世界で生きていることが幸せ。
この時の彼女はそんな風に思っているのかもしれません。
これ、マーメイドに会いに来ている恋人側から見てもすごく楽な関係ですよね。
彼女は自分から広い世界を見ないから、自分(恋人)の言うことが「世界そのもの」。
恋人は何でも好き勝手、彼女に言うことができるし、彼女の知らない世界を「教えている感」で優越感も得られます。
彼女の「世界への一歩」を止めさせていたのは恋人の「彼女は外に出てほしくない」気持ちだったのかもしれません。
自由の先にある強さと変化
自分の「今いる場所」にいることで満足していた彼女ですが、状況は一変。
ついに「外の世界」へ出ることになります。
ただ、それは当初は彼女が望んだことではない様子が、歌詞からも見て取れます。
「自由」を唱える人たちは
「人魚を海に帰すべき」と言った
硝子の中から叫んでも、何も届かない出典「マーメイドラプソディー」/作詞 Saori 作曲 Nakajin
彼女の声は届くことなく、結局海に帰ることになります。
そこで彼女は、広い世界に出ても、きっと自分の気持ちは変わらないと歌います。
ねえ、分かるのよ
「自由」になって広い世界を見て
わたしはきっと知ることになるの
貴方の代わりはいないと出典「マーメイドラプソディー」/作詞 Saori 作曲 Nakajin
この言葉、あなたはどう取りますか?
私は敢えて彼女がこの言葉を発すしたのは、彼女の気持ちが今後変わっていくだろうことを暗示しているような気がします。
広い世界を見ても、変わらない気持ち。
それは本当に「広い世界」に出て、様々な経験を通してみないと「何が変わらなくて、何が変わるのか」わからないはず。
広い世界に出るにあたり、予めこれを言っちゃう気持ちは「変わっていく自分」を実は気づいているんだろうな~と勝手に想像してしまいます。
そして、その後に登場する言葉は……
煌めく自由なダンスホール
次はわたしが会いに行くわもう待ってるだけじゃないから
今宵純白のダンスで踊るから出典「マーメイドラプソディー」/作詞 Saori 作曲 Nakajin
広い世界に出た彼女は「もう待ってるだけじゃないから」と言い切ります。
さあ、この「広い世界に出て経験を積んでいく彼女」を、恋人はこれまで通り、愛することはできるのでしょうか?
彼女が自分の目で見て感じて考えて、自分の意見をもち自分の足で自分の人生を歩み出した時、そんな彼女をもし恋人が「また」狭い世界に閉じ込めようとしたら……。
彼女には曇った恋心で自分の人生の輝きを喪うようなことだけは、してほしくないなと(老婆心ながら)思うのでした。
まとめ
今回ご紹介している曲は、基本的に「彼女側」の視点のみで語られています。
だから、恋人側から見たら……というのはあくまで私の勝手な解釈。
恋は人生を楽しくしてくれるし、人間としての経験値を上げてくれるものですが、どうかその心だけに惑わされて、自分が自分らしく生きる道を、誰かにゆだねないでほしいなと思います。
広い世界に出て、最終的にはかつての好きな人(王子様)を振っちゃう人魚姫がいてもいい、と私は思います 笑
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